名前の決め手

調査レポート

姓名判断には、どんな流派があるのか。

本やサイトで結果が違うのは、流派が違うからです。明治から現在まで、資料で確かめられた 54 の方式を一覧にしました。

姓名判断は、いつ・どこで生まれたのか。

画数で吉凶を見る姓名判断は、明治の日本で生まれました。

「中国で何千年も続く占い」と言われることがありますが、苗字と名前の画数を合わせて見る方法は、明治の日本で形になったとする研究があります(小林康正 2008年)。1901年に新聞の連載で流行し、1912年ごろから本が次々に出ました。

百科事典には、字から吉凶を見る占いは中国の古い時代からあるという説明もあります。「名前の字を占う」ことの歴史と、「画数の合計で見る今の方法」の歴史は、分けて考える必要があります。

  1. 江戸まで名前の占いはあったが、苗字と名前の画数を合わせて見る形ではなかった。
  2. 1893年数の吉凶で名前を見る本が出る(初出とされる)。
  3. 1901年新聞の連載で「新式姓名判断」が流行する。
  4. 1912〜15年本が次々に出て、最初の流行になる。さんずいは3画で数えるのが普通だった。
  5. 1929年天格・人格・地格・外格・総格の「五格」にまとめ直した方法が発表される。旧字体と、部首を本来の字で数える数え方(さんずい4画)、1画を補う数え方が加わる。婦人雑誌を通じて、子どもの名づけに広まる。
  6. 1946年〜ふだん使う字が新字体になる。旧字体のまま数える方式と、新字体で数える方式に分かれていく(新字体で数える方式の発表は1967年)。
  7. 現在音・色・生年月日と組み合わせる方式も含め、名前のつく方式は50を超える。

流派は、どこが違うのか。

違いは5つの組み合わせです。

  • どの字で数えるか(旧字体・新字体・戸籍の字 など)
  • 部首をどう数えるか、1画を補うか
  • いくつの数を見るか(五格のほか、1種類だけ見る方式から10種類以上見る方式まで)
  • ほかに何を合わせるか(陰陽・五行・音・生年月日)
  • 数の吉凶の表(同じ数でも、本によって吉にも凶にもなります)

「流派は30以上ある」とよく言われますが、これは名づけの専門家が記事に書いた目安で、数えた一覧は示されていません。本の題名に名前が出てくる方式だけで、50を超えます。

1〜81 の数の吉凶は、何をもとに決まったのか。

確かめられませんでした。

五格の方法を広めた団体は「易学をもとに考えた」と説明していますが、どの書物のどの記述をもとにしたかは書かれていません。「中国の宋の時代の図がもとになった」という説もありますが、裏づけになる資料は見つかりませんでした。

統計の裏づけが示されていないことは、研究でも指摘されています(岡田誠 2023年)。当サイトが使っている表は 1〜81 の吉凶の表 にあります。

流派の一覧

資料で確かめられた 54 の方式

確かさの度合いを4つに分けています。「本の存在だけ確認」は、国立国会図書館の目録で本・著者・年を確かめたもので、数え方の中身は読めていません。「–」は確かめられなかった項目です。

  • 中身まで確認
  • 信頼できる資料あり
  • 本の存在だけ確認
  • 1つの資料だけ

明治〜昭和の初め(いまの形ができる前) 15件

名前人・本・年字体部首見る要素確かさ
菊池准(準)一郎『古今諸名家姓名善悪論 初編』1893 天命堂当時の字3画派画数の合計の吉凶(数霊)・陰陽信頼できる資料あり
海老名(蝦名)復一郎・又一郎『新説 神秘術』1898 / 『姓名判断新秘術』(国会図書館の目録では1914)––「五則」に整理したとされる信頼できる資料あり
佐々木盛夫「新式姓名判断」1901年『報知新聞』連載 / 『新式姓名法』1903当時の字–乾坤(陰陽)・五行・読み下し・画数中身まで確認
小関金山『人生哲理命名心法』1907 東陽堂––「統計」を掲げる信頼できる資料あり
高階鏡郭(人生哲理高階講究本部)『生児命名姓名判断伝授二百問答』1912––五則+画数を五行に直す(三才の先駆)信頼できる資料あり
帝国姓名学会(木之上真康・谷川真通)『姓名学』1912–––本の存在だけ確認
林充胤『命名真理 姓名判断』1913 侑運堂当時の字3画派漢数字を実数で数える早い例信頼できる資料あり
小倉鉄堂(日本哲名学館・大阪)『姓名と犯罪』1914––新聞の犯罪者名を分類信頼できる資料あり
西洋式数字姓名判断中根函洲 1914 氷心堂 / 福中宏允 1978 立風書房ローマ字–アルファベットの数霊(数秘術)本の存在だけ確認
根本円通「霊理学派」(日本霊理学会→神国霊理学院→正名閣)『姓命学大意』1927〜『開運命名の真理』1956当時の字(戦後『當用漢字命名正典』1948)3画派1932年に熊﨑式を批判する本を出す信頼できる資料あり
哲理姓名学会(松村光庸ほか)『哲理姓名学原理』1930–––本の存在だけ確認
日本純正姓名学会(深田勝彦)『姓名学秘録』1933–––本の存在だけ確認
大隈博誠『姓名学大全』1935実際に書く字3画派康熙式を採らない立場信頼できる資料あり
高木乗(高木綜合運命学会)『姓名占象法講座』1933書かれたままの画数3画派康熙字典の絶対視を批判1つの資料だけ
山口裕康『名相と人生』1936 東学社現行の字形3画派「さんずい4画」を批判1つの資料だけ

旧字体で数える系統(五格) 6件

名前人・本・年字体部首見る要素確かさ
熊﨑式(五聖閣)熊﨑健翁。1929年1月『主婦之友』付録、同年『姓名の神秘』実業之日本社旧字(康熙の正字)本字(さんずい4)五格+三才の配置。人格を最重視中身まで確認
永杜鷹堂『運命の哲理』1938・『姓名の真理』1955 清教社–––本の存在だけ確認
山本式(恵心社)山本哲生。『姓名の神秘:処世の秘訣』1981旧字本字五格+健康運中身まで確認
安斎流安斎勝洋(1945-2018)旧字(康熙)本字「統計哲学」信頼できる資料あり
南山流南山誠林旧字本字々は前の字1つの資料だけ
吉元式吉元鑑織新旧を比べる現代の用法同格同数1つの資料だけ

戦後の方式(新字体で数える方式・独自の方式) 22件

名前人・本・年字体部首見る要素確かさ
桑野式内画法桑野燿齊。1967年11月発表、『新しい姓名判断』1967 オリオン出版社新字体–五格+四運・同格中身まで確認
吉川博永『新しい姓名判断』1962 山海堂–––本の存在だけ確認
野末陳平『姓名判断』1967 光文社––五格と吉凶の数本の存在だけ確認
佐藤六龍『新しい姓名判断』1972 日本文芸社–––本の存在だけ確認
統計数理姓名学田村茲朗(茂)。『よい名前のつけ方』1966 金園社–––本の存在だけ確認
銭流銭天牛。『銭流姓名判断入門』1972 土屋書店––字画数本の存在だけ確認
大橋姓名学大橋秀吉。『姓名学入門』1967 / 1982–––本の存在だけ確認
宇宙数理姓名学安斉巌人。1981 高橋書店–––本の存在だけ確認
ピラミッド姓名学竹内威公雄・上田晃之。1982–––本の存在だけ確認
五線式姓名学川村岳園。1983 五線式姓名学研究所–––本の存在だけ確認
数令姓名学源真里。1987 東京書店–––本の存在だけ確認
桜宮式桜宮史誠。1988 池田書店––「複合殺」本の存在だけ確認
八方位姓名術 / 塚田式八方位与那嶺東雲 1991 / 塚田冨士夫 2006–––本の存在だけ確認
じゅもん式(樹門式)・霊遺伝姓名学樹門幸宰。1997 成星出版 / 2007––「先祖からの遺伝」を読むとうたう本の存在だけ確認
山田流・姓名運勢学山田芳彰。2000 現代書林–––本の存在だけ確認
ハチロー式浅野八郎。2004 太陽企画出版–––本の存在だけ確認
太町流太町聰文。2008 イカロス出版–––本の存在だけ確認
十八列ツキ数姓名学中川穰亮・青木文吾。2012 小学館–––本の存在だけ確認
山倭流山倭厭魏。2019 幻冬舎MC–––本の存在だけ確認
現代式ジュヌビエーヴ・沙羅。2020 説話社–––本の存在だけ確認
山口式姓名学井上賀聖・呂康実。2022 中日出版–––本の存在だけ確認
一般の五格(新字体派のサイト)特定の創始者なし新字体そのまま五格信頼できる資料あり

音・響き・色を主にする方式 5件

名前人・本・年字体部首見る要素確かさ
音波姓名学小林三愛史。1973 評言社––音(中身は未確認)本の存在だけ確認
母音姓名学添田美雄。1982 ゴマ書房––呼び方の母音本の存在だけ確認
発音式姓名判断河本静一朗 1990 ワニブックス / 河本尚美 2002 PHP––「画数で占わない」と題名に明記本の存在だけ確認
カタカムナ音霊姓名判断叶唱ケン。1998 現代書林––音霊本の存在だけ確認
色霊姓名学城橋景子。1995 現代書林––「画数だけでは判らない」と題名に明記本の存在だけ確認

生年月日と組み合わせる方式 6件

名前人・本・年字体部首見る要素確かさ
四柱推命姓名学(日本命理学会)武田考玄(1916-2000)。1979 秀央社––四柱推命+姓名信頼できる資料あり
姓名判断術(四柱推命による)美浜康沖。1972 鶴書房––四柱推命+姓名本の存在だけ確認
算命姓名学八木橋信忠。1980 ベストセラーズ––生年月日+名前本の存在だけ確認
数秘姓名学小林栄策。1989 / 1999 主婦の友社––画数+生年月日本の存在だけ確認
姓名学+九星学山口純一郎。1987〜1992––九星と併用本の存在だけ確認
占い数霊術田中智華雄。2000 田中気学堂––姓名学と四柱推命を「合併」本の存在だけ確認

「3画派」は、さんずいを3画のように見たままの画数で数える立場です。「本字」は、部首を本来の字の画数(さんずいは「水」で4画)で数える立場です。

この一覧の読み方

どの流派が正しいかは、決められません。

  • 当サイトは、特定の流派を採用しているわけではありません。よく使われる2つの数え方(旧字体で数える・新字体で数える)の両方で計算し、結果を並べます。
  • 流派の名前には、登録商標として表示されているものがあります。ここでは歴史の事実として名前を挙げています。
  • 画数が人生を左右することを、対照を置いて確かめた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。

確かめられなかったこと

  • 1〜81 の数の吉凶のもとになった資料
  • 明治の最初の本が、いくつの数までの吉凶を載せていたか(原本を読めていません)
  • 新字体で数える方法を、最初に言い出した人
  • 「本の存在だけ確認」とした35の方式の、数え方の中身
  • 寺や神社で行われる命名の流派

おもな出典: 小林康正「姓名学の誕生」京都文教大学『人間学部研究報告』10(2008年)/ 岡田誠「熊崎式姓名判断の源流」『人体科学』32巻1号(2023年)/ 国立国会図書館サーチの書誌 / 各団体の公開ページ(2026年10月に確認)。 熊﨑以前の細かい経緯の一部は、1人の書き手の調査に頼っています(表では「1つの資料だけ」としています)。誤りに気づかれた方は、運営者情報の連絡先までお知らせください。

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